研究概要 |
除脳イヌで無麻酔下に仙髄排尿中枢の電気刺激を行ったところ,膀胱収縮は誘発されても正常排尿時のような、膀胱収縮に先行する尿道の弛緩は明瞭には得られなかった。刺激条件がまだ適切でないのか、仙髄副交感神経刺激時に外尿道括約筋中枢との連絡路が同時に刺激されるためなのか今後も検討が必要である。橋排尿中枢は吻側部橋の青斑核αの領域に存在するが、その背外側にある青斑下核を刺激すると膀胱収縮を抑制することが分かっている。そこで青斑下核の電気刺激により引き起こされる排尿抑制反応を、仙髄クモ膜下腔への薬剤投与により調節できるかどうかを、GABA拮抗剤であるpicrotoxinやbicucullineまたはオピオイド拮抗剤であるnaloxoneのクモ膜下腔投与により検討した。青斑下核を持続電気刺激(10〜30μA,0.3msec,20〜50Hz)しながら膀胱内左曲線を記録すると、電気刺激しない時よりも膀胱容量は増大した。また、青斑下核の電気刺激により律動性膀胱収縮も抑制された。クモ膜下腔にpicrotoxin1〜10μgあるいはbicuculline10〜30μg,またはnaloxone10〜30μgを投与して、青斑下核電気刺激の排尿抑制作用に対する影響を検討したが,膀胱容量の増大や律動性膀胱収縮の抑制効果にはほとんど影響がなかった。排尿反射に対するNOの作用の検討も行った。除脳無麻酔下に膀胱伸展刺激により排尿反射を誘発し、NOの前駆物質であるL-arginineを動脳内投与すると、膀胱容量が増大して残尿量も増大した。この反応はguanylatecyclase阻害剤のmethylene blueの投与により一過性に阻害され、methylene blueの単独投与では膀胱容量は小さくなった。また橋排尿中枢の電気刺激による膀胱収縮はmethylene blueの投与により増大し、自発性膀胱収縮も出現した。したがって、NOは膀胱の安定性にも関与していることが考えられる。また橋排尿中枢電気刺激により内尿道括約筋は弛緩し、それにもNOが関与していることが分かった。
|