研究課題
1991年4月〜7月にかけて雌豚を用いて、内視鏡による豚腎摘除の実験をおこなった。その結果、(1)後腹膜腔からのアプロ-チは困難である。(2)トロカ-ルは1cm径のものが4〜5本必要であり、各トロカ-ル間の距離は最低5cm離す必要がある。(3)腎茎部へのアプロ-チは、腎周囲の腹膜を切開した後、尿管の結紮・切断を行い、尿管内側に沿って剥離を行う。(4)鉗子類は開創手術において使用する器具に対応するものは原則として全て必要であり、それを内視鏡的に使用できる様にする必要がある。(5)その他に、結紮用器具、摘除した腎を体腔外に取り出す為の工夫などが特殊に必要であることが判った。(以上、第5回日本Endourology、ESWL学会、1991年11月29日、金沢でビデオ発表)以上の経験に基づき臨床応用を行った。臨床例は現在までに2例の腎摘除を経験しており、第1例目は1991年10月1日におこなった。症例は、34歳男性で右の先天性腎盂尿管移行部狭窄による無機能腎であった。4本の外径1cmと1本の0.5cm径のトロカ-ルを用いて腎摘除を行った。腎周囲の脂肪組織が豊富なこと、拡張した腎盂が大きかったこと、安全を期して手術を行ったこと、などの為に手術時間は7時間を要したが、出血量は110mlで腎を摘除しえた。 第2例目は、1991年11月19日59歳男性の右低形成腎に対して、同様に安全に手術を施行し得た。(以上、第80回日泌総会、1992年4月18日ビデオ発表予定)。又、この間骨盤内リンパ節郭清も数例経験して来た。それらの技術的進歩と器具の開発により、1992年2月4日、48歳男性の原発性アルドステロン症例に対して、腹膜鏡下左副腎摘除をおこないえた。腹腔鏡を用いる泌尿器科の術式は、適応を十分に検討すれば器具と手技の改良により、一般化しうる術式であると考えられた。
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