空気力学的検査の高度化に関して、これまで用いてきた発声時における呼気流率、声の高さ、声の強さの三つのパラメータに声門下圧を追加すべくミニチュア圧トランスデューサを導入し、温度特性と周波数特性を計測、臨床検査での実用性を検討した。しかし、高齢者においては検査の負担が大きく、ごく限られた対象にしか適用できないことが解った。また、種々の疾患の程度とこれらパラメータの間の関係を明らかにしてきた。 声帯の振動状態に関する検査の高度化については、エレクトログロトグラフの波形をビデオストロボスコピの画面に同時記録すべく検討中である。 音響分析による検査では、癌、ポリープ、反回神経麻痺などの音声障害を伴う代表的疾患について、音響計測量と音声障害の関係を明らかにしてきた。また、過去のデータベースより音響パラメータの正常範囲を求め、病的例との関係を明らかにする基礎とする。その他に基礎的問題としては、計測は一度でいいのか、あるいは、複数回するとすればどのデータを採用すべきかを検討してきた。このことは高齢者における検査では患者の負担の軽減のために重要な事と考える。 発声訓練のためのフィードバックの方法については視覚によるものとした。つまり、呼気流率、声の高さ、声の強さの3つのパラメータについては高齢者にも一目で解るように大型のメータに表示する。音響パラメータについてはその内容を理解するのは困難であるため、声の善し悪しや周期の揺らぎを一目で把握できるように音声信号を図を用いて表現することを試みている。
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