研究課題/領域番号 |
03557076
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
吉木 周作 昭和大学, 歯学部, 教授 (30085740)
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研究分担者 |
菱川 健司 昭和大学, 歯学部, 助手 (50189784)
池田 通 昭和大学, 歯学部, 講師 (00211029)
山口 朗 昭和大学, 歯学部, 助教授 (00142430)
角田 左武郎 昭和大学, 歯学部, 助教授 (40112726)
阪本 桂造 昭和大学, 医学部, 助教授 (50119195)
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キーワード | 骨組織 / 脱灰切片 / 骨標識 / 組織化学 / 免疫組織化学 / in situ hybridization |
研究概要 |
通常の脱灰切片では石灰化骨組織と類骨が識別できないため、骨組織における石灰化の程度を検索できない。研究代表者の吉木はこの点を改良すべく種々の方法を検討し、塩化シアヌル処理後に脱灰切片を作製すると類骨組織を簡単に識別できることを見いだし、1973年に報告した。その後この方法は吉木法として多くの研究者により利用されているが、さらに改良すべき点も残されていた。そのため本研究において我々は、現在までの吉木法に関する研究を基にして、簡便でさらに優れた骨組織観察法を開発することを目的として種々の実験を行い、以下の結果を得た。 1)組織化学的検索法の検討:破骨細胞を同定するのに利用されている酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)活性を通常の脱灰切片で検出すると、破骨細胞に同酵素の強い活性が認められたが、その他に肺や脾臓のマクロファージおよび骨芽細胞にも活性が検出された。一方、塩化シアヌル処理後の脱灰切片でTRAP活性を検出すると肺・脾臓のマクファージや骨芽細胞はTRAP陰性となり、破骨細胞が特異的に染色された。この方法は破骨細胞を組織化学的に同定するのに有用な方法と考えられたため、J.Histochm.Cytochem.(39:1415-1420,1991)に報告した。この方法がヒトの骨組織でも応用可能か現在検討中である。 2)骨標識法の検討:従来の方法で作製した脱灰切片ではテトラサイクリン(TC)などによる骨標識の観察ができないため、骨形態計測における動的パラメーターの解析が困難であった。そこで、本年度もTCとカルセインを投与したラットを用いて、塩化シアヌル処理が骨標識にどの様な影響を及ぼすかを検討した。我々は昨年度の本報告書で、塩化シアヌル処理を行うことによって、TCとカルセインの標識線を脱灰切片でも観察できる可能性があることを報告した。しかし、本年度の実験からこの結果は再現性が低いことが明かとなった。そのため、現在、塩化シアヌル処理標本をさらにマイクロウェーブ処理することなどにより、より効率よく骨標識を観察できるか否かを検討中である。 3)免疫組織学的検索:EDTAで脱灰した骨切片を用いてI型コラーゲンとオステオカルシンを免疫組織化学的に検出するのに適した抗体を検討し、良好な染色結果が得られる抗体を入手することができた。それらの抗体を用いて塩化シアヌル処理した骨切片で免疫染色を試みたが、バックグラウンドが強くなりすぎて良好な染色結果が得られなかった。 4)最近、我々は脱灰切片で遺伝子の発現を検索できるin situ hybridization法を開発した。現在、塩化シアヌル処理切片でもこの方法の応用が可能か否かを検討中である。
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