研究概要 |
骨の正常な発育や機能の維持には,常に適当な荷重の負荷を必要とし,骨系細胞はこの外力に応答して,その機能を変化させていると考えられる.しかし,骨系細胞がどのような機序で外力に応答しているか,その詳細は不明である.本研究で試作中の培養細胞反復刺激装置は,骨系細胞・歯根膜細胞・軟骨細胞などをコラーゲンゲル薄層内に包埋し,これを機械的に反復伸展することにより,生体内条件に近い三次元的な外力を培養細胞に負荷するものである.初年度に完成したカム駆動方式の試作機(4号機)は耐久性に優れ,約1年間の使用で故障していない.また,コラーゲンゲルを支持するためのナイロンメッシュとステンレス棒は,反復伸展中に剥がれやすいが,ステンレス棒にかぶせたポリエチレンチューブを接着剤としてナイロンメッシュを加熱融着することにより強固な接着が可能となった.さらに,細胞の播種は低温で,無菌的かつ均等に行わなければならず,ディッシュ数が多いと長時間を要するが,ナイロンメッシュの支持台を工夫することである程度の改善が可能となった.骨系細胞に外力を負荷した結果は,本研究以前のソレノイド駆動方式の試作機での結果と同様に,約10%の伸展で有意に細胞増殖の促進がみられた.一方,パルスモーター駆動方式の試作機(5号機)はコンピュータ制御により,複雑な外力を負荷することができる.5号機本体は平成5年1月末に完成し,現在さまざまな外力の負荷パターンで骨系細胞を培養しながら実験を行っている.最終年度には,4号機を使った生化学的および組織化学的研究を継続する他,5号機を使っていくつかの基本的な外力負荷パターンを選定する予定である.将来はこれらのパターンをROMに組み込み,コンピュータ本体とは切り放して使用することも可能である.
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