研究概要 |
防水モーター・カム駆動方式では不可能な,より複雑な運動による外力を負荷することのできるパルスモーター駆動方式の試作機は,平成5年1月に一応完成し,何回かの使用実験を行ったが,炭酸ガス培養器内の環境(特に湿度)のため,十分な耐久性のある実用的な装置として完成させることはできなかった。一方,防水モーター・カム駆動方式の使用実験は順調に進み,試料保持部等の若干の改良と実験修了後に組織化学的検索のために試料を固定包理する際の周辺器具の作製を行った。使用実験ではこれまでと同様にDNA量やアルカリ性フォスファターゼ活性といった生化学的な定量や樹脂包埋試料の組織学的観察の他,試料をセットしたユニットを本体から取り外し,倒立型微分干渉顕微鏡のステージ上に乗せ,コラーゲンゲルを伸展した状態および弛緩した状態で同一の細胞を観察した。その結果,コラーゲンゲルの伸展により,支持体であるナイロンメッシュの網目は伸展方向に引き伸ばされるが,それと直角の方向の変形はほとんど無いことがわかった。すなわち,ゲルの伸展により網目の面積と網目内に存在する細胞の面積が増大していた。これは網目内部のコラーゲンゲルが伸展方向に引き伸ばされると同時に,網目の支持が無い方向(ナイロンメッシュ面と鉛直な方向)に圧縮されて,細胞を変形していると考えられる。今後,こうした細胞の変形量を細胞に負荷された外力の強さの指標として使うことにより,異なった装置によって得られたデーターと比較することが可能になる。本研究ではパルスモーター駆動方式を完成させることはできなかったが,当初予定していなかったカム駆動方式を採用することで,目標の性能をほぼ満足し,実用に耐え得る耐久性と操作性を備えた装置を開発することができた。
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