研究概要 |
歯周疾患においてPorphyromonas gingivalis(Pg)は重要な細菌として注目されている。そこで成人性歯周炎患者におけるPgの分布状況の検索を目的として、非放射性DNAプローブによるPgの検出を行った。成人性歯周炎患者の歯肉縁下プラークを採取し,スルホン化標識したPgの全菌体DNAプローブを用いてPgを検出した。また、各被験部位における臨床症状および血清中抗体価とPgの感染との関連性についても検討した。Pgは被験者全員から検出され、検出率は35%であった。Probing depth(PD)が4mm以上の部位では、3mm以下の部位と比べて有意に高い検出率を示した。Bleeding on probing(BOP)(+)の部位では、BOP(-)に比べて有意に高い検出率を示した。また、逆にPgがより多く検出された部位において、PD4、6mm以上の部位およびBOP(+)の部位の比率の上昇が認められた。その一方で健全部位からもPgは検出された。また、Pgの感染と臨床症状の関連性において、患者間でばらつきが認められた。Pgの検出率および全検出量と抗体価との相関については,両者の間に統計学的に有意な相関は認められなかった。しかし血清中抗体価が低くPgが多く検出された被験者は認められなかったが、血清中抗体価が高いにもかかわらず,Pgの検出量が少ない被験者は何例か認められた。以上のことから、Pgは成人性歯周炎患者の口腔内に広く分布しており、歯周組識の破壊に深く関連していることが示唆された。しかし、歯周組織の破壊がPgの感染のみによって起こるのではないことも同時に示唆された。これらの研究結果の一部は1992年日中医学会、第9回ICPR学会総会にて報告を行なった。
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