研究概要 |
成人性歯周炎患者15名および健常者6名の口腔内のすべての残存歯から歯肉縁下プラークサンプルを採取し、Porphyromonas gingivalis(Pg)ATCC 33277株の染色体DNAをスルホン化標識したプローブを用いてPgを検出した。また、同時にサンプリング部位におけるプロービングデプス(PD)とプロービング時の出血(BOP)の有無(+、-)を記録し、Pgの検出率、検出量と臨床パラメーターとの関連について統計学的に検索した。その結果、Pgは患者全員および健常者群の3名から検出され、患者群における検出率の平均は31%であった。臨床パラメーターとの関連については、PDが4,6mm以上あるいはBOP+の部位では有意に高い検出率を示し、逆にPgがより多く検出された部位では、PDが4、6mm以上あるいはBOP+の部位の比率が増加する傾向が認められた。しかしながら臨床的には健常である部位からもPgは検出され、またPDの深い、あるいはBOP+でもPgが検出されない部位も認められた。以上のことから、Pgは成人性歯周炎における歯周組織の破壊において重要な役割を果たしているが、それはPgのみによるものではないことが示唆された。 また、Pg 381株の線毛構成蛋白をコードする遺伝子をプローブとして、RFLP分析により臨床から分離したPg株の線毛遺伝子領域における多様性について検討した。その結果、臨床株において多様性が認められた。また同一患者の同一歯周ポケットからも遺伝学的に異なるPg菌株が存在していることも示された。この結果は今まで報告されていたPgの線毛の表現型の多様性を裏付けるものであった。
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