研究概要 |
無歯顎者の口腔内,義歯,心理,生理学的機能などの諸要素をすべて定量化し,多変量解析を用いて総合的に解析した新しい診断システムを構築することを目的に以下の研究を行った。 1.口腔内要素,義歯の状態および心理的状態を定量的に把握するための2種類の調査用紙(調査用紙1,2)を試作し,予備調査を10人の術者が8人の無歯顎者に対して行い,調査用紙2を用いれば比較的臨床経験の浅い術者でも客観性のある診査結果が得られることが明かとなった。 2.約400名の無歯顎患者に対して試作した診査用紙による調査を行った。そのうち,デ-タの完全に揃っている320名分について分析を行った。 3.咀嚼スコアを計測し,無歯顎者の生理学的検査を行った。 4.以上の大量のデ-タのうち,(1)無歯顎者の満足度,(2)術者による義歯の評価,(3)術者による無歯顎者の口腔内状態の評価,(4)無歯顎者の咀嚼スコアについて,多変量解析を行い,各種パラメ-タの相互関係を統計学的に検討した。その結果,無歯顎者の満足度に強い影響を与える因子が明かとなった。 5.術者から見た義歯の重要な因子と無歯顎者から見た義歯の重要な因子の間に統計学的な有意差を認めたため,従来の術者から見ただけの義歯の評価法のみでは不十分であり,無歯顎者の生活の質(Quality of Life)の向上の為の新たな診断システムの必要性が強く示唆された。(広島大学歯学雑誌に発表済み) 6.以上の結果を総括して新しい無歯顎診断システムを試作した。平成4年度はこの試作した無歯顎診断システムの有用性を明らかにするとともに,臨床的に使用し易いシステムに改良していく予定である。
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