フッ素は現在の所、最も確実な齲蝕の予防剤である。しかし日本ではフッ素の応用には根強い反対があって、予防剤として広く応用される所までは行っていない。 フッ素の安全性に対する疑問に答えるためには、日本人の食品からのフッ素の摂取量を行確に求め、さらに、日本人の生体での吸収率や排泄量、即ち、フッ素の出納量を正確に調べ、安全に使用出来るフッ素の上限をきめなければならない。そのためには、まず、食品中のフッ素量を正確に測定する必要があるが、現在の所、簡便で確実な定量法はまだ確立されていない。 筆者らは、従来のフッ素の拡散装置を改良し、拡散を高温下で行なう事によって、試料の分解とフッ素の遊離を促進し、分析時間の短縮と回収率の向上をはかる目的で、テフロン製の拡散装置を開発した。さらに本研究費の援助を得て、拡散容器および加圧装置を組み合わせた高温・迅速型フッ素拡散装散を開発し、種々の試作を経て、最終型に到達した装置は、国立予防衛生研究所において職務発明として認可され、現在、特許出願中である。 上記の高温・迅速型のフッ素拡散装置を使用して、種々の試料について評価試験を行っているが、一般的な食品中のフッ素については、従来法と比較して、分析時間が約1/2に短縮され、回収率も平均約10%向上した。また、従来の拡散装置では不可能と言われていた血清中の結合型のフッ素も、我々の装置で定量可能な事が、実証されつつある。 以上の結果から、我々は、本研究費の補助による新・微量拡散装置の開発に成功したと考えている。
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