研究概要 |
カンジダ酵母はエイズや臓器移植後などで免疫力の低下した患者に重篤な感染症を引き起こす病原性微生物である。この酵母は二形成菌であり、環境変化によって酵母形と病原性のより強い菌糸形の間で二形性変換を行う。したがって、菌糸形への変換機構を解明することは薬学的にきわめて重要である。 カンジダ酵母は培地にエタノールが添加されると菌糸の伸長を開始する。しかし、これまでこの酵母では[Ca^<2+>]iが測定された例はなかったので、fura-2を用いる超高感度Ca^<2+>蛍光顕微分光測定法を樹立した。本法により、エタノールを添加すると菌糸の形成に先立ち,[Ca^<2+>]iが約100nMから約1000nMに上昇することを明きらかにした。またこの上昇のピークはイノシトール1,4,5-3リン酸の細胞内濃度の上昇ピークと一致していた。このことから、カンジダ酵母のCa^<2+>動員にはイノシトール1,4,5-3リン酸が関与すると考えられる。したがって、より病原性の強い菌糸形への変換を阻害するには、Ca^<2+>動員をブロックすればよいことが明きらかとなり、今後の薬学的応用研究に大きなヒントが得られた。 上述の薬学的応用研究の基盤をより一層堅固にするため、[Ca^<2+>]iの一過性変動をリアルタイムで測定するための超高感度蛍光測光法を樹立した。この方法は、発光クラゲが産生するCa^<2+>依存性発光タンパク(エクオリン)のアポタンパク質cDNAを酵母細胞内で発現させ、これをプローブとして[Ca^<2+>]の一過性変動を秒のオーダーで測定するものである。この遺伝子工学を適用した再生エクオリンによる測定システムは期待どおりの測定成果を示し、カンジダ酵母の菌糸形成時におけるCa^<2+>動員機構を詳細に詳細に解析するための有力な手段となることが判明した。
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