研究概要 |
イサリア(Isaria)属菌より単離した免疫抑制物質ISP-1の受容体の精製を行うためにラット脾臓をホモジナイズしたのち10,000gで遠心した。放射標識したISP-1を用いてその結合活性を測定したところ活性は遠心上清に回収された。この画分についてSDS-PAGEを行ったのち、ニトロセルロ-ス膜を用いてwestern blottingを行った。このニトロセルロ-ス膜を放射標識したISP-1を含む緩衝液中に浸け結合反応を行ったところ弱いながら分子量10,000〜15,000付近のタンパク質のバンドに放射活性が認められた。この分子量の値は、現在、免疫抑制物質として汎用されているシクロスポリンAと特異的に結合するタンパク質であるシクロフィリンのものと類似していた。そこで、ISP-1がシクロフィリンに作用するか否か検討を加えた。シクロスポリンAはシクロフィリンの持つペプチジルプロリルイソメラ-ゼ活性を阻害することが知られている。ISP-1について同様の作用があるかを調べたところ、阻害活性は認められなかった。さらに、上述したラット脾臓の10,000xg上清を分離用超遠心機を用いていて遠心し100,000xg上清を得たところ、ISP-1結合活性は消失していた。シクロフィリンがこの画分に回収されることが知られていることを考えあわせると、ISP-1受容体はシクロフィリンとは異なり、100,000xgの沈殿画分、すなわち膜画分に存在することが推定された。 一方、ISP-1の収量は、イサリア菌の培溶液の場合1mg/1と極めて悪いため、高い収量の得られる菌を探したところ、M.steriliaを用いることにより、約200倍収量が得られることが明らかになった。また、この菌の培溶液中には、ISP-1と類似構造を有すると思われる微量成分が認められた。今後、これらの微量成分を単離精製し、そのの免疫抑制活性を調べる予定である。
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