研究分担者 |
片倉 景義 日立製作所中央研究所, 第九部, 主管研究員
西村 敏博 大分大学, 工学部, 助手 (70117406)
森田 久樹 香川医科大学, 医学部附属病院, 講師 (70145051)
宇多 弘次 香川医科大学, 副学長 (80107044)
松尾 裕英 香川医科大学, 医学部, 教授 (90028514)
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研究概要 |
前年度までは、冠動脈、心筋、肝などの生物組織を対象として音速および超音波減衰量の計測に基づき生物組織性状を定量的に評価することにより、生物組織性状診断法の開発を進めてきた。本年度は、組織性状診断をより定量的に行うことをめざし、従来の方法では推定でしか評価し得なかった生物試料の体積弾性率Ksおよび密度ρsを計測するための研究を推し進めた。その中心となるacoustic cover membraneの開発に関し以下のような成果を得た。試料と水の間に、この両者より音響インピーダンスの大きなcover membraneを介入させると、反射エコーはほどんど試料面からのものとなり、その反射エコーの強度は √<rWL^2+rLS^2/1+rWL^2rLS^2>と表され,ここでrLS=Zs-Zl/Zs+Zl,rWL=Zl-Zw/Z1+Zw,(Zs,Z1,Zwは各々,試料,cover membrane,水の音響インピーダンス)であるため、反射エコー強度の測定から試料の音響インピーダンスZsが計測できる。ここで従来の我々の試料の音速測法を用いて試料音速Vsを計測すれば、体積弾性率Ks=ZsVs,密度ρs=Zs/Vsが求められる。この計測のためのcover membraneの音響インピーダンス、厚みはどのようなものが最適であるかを検討した。 1.厚みおよび音響インピーダンスに関する検討;cover membraneの厚み、音響インピーダンスにより反射率がどのように変化するかを詳細に検討した結果、試料の音響インピーダンスより大きな音響インピーダンスを有し、かつその厚みが使用超音波の1/4波長であるようなmembraneを用いた場合、十分な反射率が得られることを見い出した。すなわちmembraneの音響インピーダンスZ1が1.83,4.0,13.1の場合、反射強度の分布が試料の音響インピーダンスの分布にほぼ比例するため画像の解析が極めて容易となる。 2.材質に関する検討;材質としては音響インピーダンス3.5であるpolycarbonateを用い、厚さ5μmのシート状にロール延伸したもの、13.1であるSiO2を用い、厚さ2μmにしたもので良好な結果を得た。このcover membraneを用いることにより生物組織の体積弾性率を計測することが可能となった。
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