研究概要 |
医薬品開発の前臨床試験では、膨大な数の実験動物を用い新規化合物の有効性・安全性について検討されてきが、動物愛護の立場から動物の使用数を少なくする代替実験法の開発が望まれている。本研究では、培養細胞系を用いた薬物吸収・分泌の評価法を確立するために、培養上皮による薬物輸送実験を行い以下の成果を得た。 1.腸管上皮、尿細管上皮のモデル系の確立:代表的株化細胞として、腎由来のLLC-PK_1細胞、腸由来のCaco-2細胞を用い、多孔性フィルター(Transwell^<TM>)上で培養して単層細胞シートを形成させ、電気抵抗を指標としてseeding条件や培養期間などを調節し、薬物輸送実験に供し得る系を確立した。 2.培養腸上皮細胞Caco-2による腸管吸収の評価:Caco-2細胞シートによる経口用セファロスポリン系抗性物質及び抗悪性腫瘍剤bestatinの輸送は、方向選択的で腸管吸収に対応する経細胞輸送能を示した。この輸送は種々のジペプチド共存によって顕著に阻害されること、頂側膜液pHに依存することなどが示されたことから、これらの薬物は、頂側膜のH^+/ジペプチド共輸送体によって輸送されると考えられる。 3.培養腎上皮細胞LLC-PK_1による尿細管分泌の評価:カチオン性薬物tetraethylammonium,cimetidine,procainamide,quinidineの輸送を検討した結果、LLC-PK_1細胞シートは尿細管分泌に対応する経細胞輸送能を保持していること、頂側膜にH^+/有機カチオン逆輸送体が局在すること、頂側膜側のpH低下に伴い有機カチオンの輸送活性は増大し、それに相応して細胞内蓄積量は減少することが示された。 以上、多孔性フィルター上に培養したCaco-2細胞、LLC-PK_1細胞は、腸管吸収や尿細管分泌のin vitro評価を可能とするのみならず、輸送体に対する薬物相互作用などの解析に有効な手段と考えられ、動物実験の一部を代替可能とするものである。
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