(1)マウス抗糖鎖モノクローナル抗体に対する抗イディオタイプ抗体の樹立とこれを用いた患者血清の評価-抗シアリルLe^a抗体および抗シアリルSSEA-1(シアリルLex)抗体に対する抗イディオタイプ・モノクローナル抗体を多数樹立した。これらを用いて、患者血清中の糖鎖性癌抗原に対する抗体価を放射免疫測定法にて測定した。 (2)ヒト抗糖鎖モノクローナル抗体の作製、抗イディオタイプ抗体の樹立と患者血清の評価-まず、抗SM4s抗体と抗Lc4抗体の2種のヒト型抗糖鎖抗体を樹立した。抗Lc4抗体に対する抗イディオタイプ抗体を3種(G3、B3およびC5、いずれもIgG)樹立した。これを用いて患者血清を評価したところ、C5抗体の認識するC5イディオタイプは癌患者血清で対照群より統計学的に有意に高く、逆にG3抗体の認識するG3イディオタイプは癌患者血清で対照群より統計学的に有意に低かった。ヒト抗Lc4抗体は、VH1.9III遺伝子とVλII.DS遺伝子にコードされていた。VH1.9IIIとVλII.DS遺伝子との組み合わせは、Lc4抗原以外の抗原に対するヒト抗体にもひろく使われている。C5抗体の認識するC5イディオタイプは、このうち抗Lc4抗体に特異的であったが、G3抗体の認識するG3イディオタイプは、このふたつの遺伝子でコードされた抗体であれば、ひろく非抗Lc4抗体とも反応する性質を持っていた。以上の成績は、担癌患者の体内では、癌細胞に多量に発現されたLc4抗原のために、VH1.9III遺伝子とVλII.DS遺伝子との組み合わせでコードされる抗体の大部分が、抗Lc4抗体の特異性を有するようになっている事を示唆する。一方、体内にこのような糖鎖抗原の異常発現を見ない非癌患者では、VH1.9IIIとVλII.DS遺伝子との組み合わせは、Lc4抗原以外の抗原に対する抗体をコードするために使われていると考えられた。
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