研究概要 |
光学的手法を用いた生体物質の計測法は,非侵襲的,連続的,即時的計測が可能であり,近未来の計測法として極めて有望視されている。研究者らは,すでに全反射測定装置(ATRプリズム)を組み込んだフ-リエ変換赤外分光分析装置を用いブドウ糖水溶液,生体試料において,ブドウ糖濃度の光学的計測法を確立した。本研究においては,炭酸ガス・レ-ザを光源とした赤外分光分析装置を試作,分離,分解能,計測精度を高め,生体組織(皮膚,粘膜)よりの非侵襲的血糖計測の可能性を追求した。 1.炭酸ガス・レ-ザ赤外分光分析システムの試作: 炭酸ガス・レ-ザ,全反射測定装置を組み合せた炭酸ガス・レ-ザ赤外分光分析システムを試作,ブドウ糖濃度の赤外ATRと水ATRの差スペクトルで表現することにより,ブドウ糖濃度の定量化が可能となった。また,血清,全血試料において基準試料(空腹時試料)との差スペクトルで表現することにより,血糖値の定量化が可能となった。 2.生体組織よりの血糖値の非侵襲的計測の可能性の追求: フ-リエ変換赤外分光分析を適用,口唇粘膜スペクトルよりブドウ糖固有のピ-クを抽出,さらに波数2920cm^<‐1>に出現するCH_2基由来の吸光ピ-クの吸光度をリファレンスに選び,波数1033cm^<‐1>にあるブドウ糖固有ピ-クの吸光度を補正することにより,口唇粘膜スペクトル解析による非侵襲的血糖計測法開発の可能性を示唆することができた。 今後,ATRプリズムでの生体組織との密着度による吸光度の変動を補正すべく,フ-リエ変換赤外分光分析法による基礎的研究をもとに,炭酸ガス・レ-ザ(波数1087cm^<‐1>〜926cm^<‐1>)適用時,圧補正のために必要な波数の決定,圧補正のための検量線の作成が必要と考えられた。更に,実時間連続計測のためには,分光光度計と実時間デ-タ処理システム(パ-ソナルコンピュ-タ)をon-lineで結分させる必要があると考えられた。
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