研究分担者 |
本間 一男 キューピー(株), 研究所, 主任研究官
新井 映子 東京学芸大学, 教育学部, 助手 (90134783)
渡辺 道子 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (90107409)
粂野 恵子 日本女子大学, 家政学部, 助手 (20186480)
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研究概要 |
凍結濃縮は、生鮮な状態を保ちながら濃厚な溶液にする方法であるが、氷の結晶を作るのに有効な核(氷核)となる物質が開発されていないため、-10℃あるいはそれ以下にまで冷却しないと凍結が起こらず、実用化はされていなかった。当該研究グループは、茶畑や果樹園に生息し、霜害の原因となる氷核細菌がきわめて強い氷核活性を持ち、-2℃くらいで凍結を誘起することを見出し、生鮮素材が潜在的にもつ栄養,物性,香味の特性を損なうことなくこれを濃厚化する上にこの微生物の氷核活性の活用がきわめて有効であるという見通しをもつに至った。本研究は、氷核細菌を超高圧殺菌してから利用するというさらに新しい技術思想を加味した上で、生鮮素材を凍結濃縮する方法を確立することを目的とした。 1.氷核細菌の氷核を用いて、卵白とイチゴ果汁を効率的に凍結濃縮する方法を確立した。 2.卵白およびイチゴ果汁などの原料の固型分濃度を高めるための氷の成長の特徴は、フレーク状に大きいサイズで成長していくことが認められた。 3.濃縮卵白は加熱によりかたいゲルを形成した。また濃縮卵白の泡沫特性は、起泡力,泡沫安定性に優れており、この泡沫特性を生かした泡沫焙焼食品と泡沫ゲル食品を試作した。 4.濃縮イチゴ果汁を用いて無加熱ジャムを作製した。無加熱ジャムは加熱ジャムに比べぬりやすく、色は鮮やかさと赤色を表す値が高かった。またフレーバーは新鮮で、特に低沸点成分がよく保持されていた。 5.高圧殺菌法を用いて無加熱ジャムの殺菌を行う条件を検討し、20℃で3000気圧,10分で殺菌できることを認めた。 6.氷核細菌の氷核を用いて牛乳を凍結濃縮し、固形分25%の凍結濃縮乳を得、さらに高圧処理を施すことにより、pHを下げずにゲル化剤を使用しない新規のミルクゼリーを作製することができた。
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