羊毛の撥水特性を損なわない防縮加工法の開発に関する研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03558015
• 研究機関: 平安女学院短期大学
• 研究代表者: 村岡 雍一郎 平安女学院短期大学, 家政科, 教授 (10074147)
• 研究分担者: 梅原 亮 ; 伊藤 啓 平安女学院短期大学, 家政科, 助教授 (20213077)
• キーワード: キポキシ加工羊毛 / グリセールポリグリシジルエーテル / 剛軟性 / マーチンデール摩耗試験 / 汚染性 / クチクル細胞の先端の立ち上がり / エピクチクルの損傷 / 洗浄性

研究概要

本年度は研究期間の最終年度にあたるため、前年度までに未消化の問題点を検討し、まとめを行った。当初の予定では羊毛繊維を親水性多官能エポキシ化合物(グリセロールポリグリシジルエーテル:GPE)を用いて溶液中で処理した試料につき、染色実験を行ってGPEの反応サイトを推測し、更に、染色堅牢性を評価する予定であった。しかし、論文にまとめて投稿した際、審査員よりの指摘で、剛軟性、摩耗特性と汚染性・洗浄性に関して再検討する必要にせまられた。また、エポキシ加工羊毛では摩耗特性が特に重要であるとのコメントも付けられていた。そこでこれらの問題点に絞って新たに実験を行い、論文内容を変更して投稿し直した(The physical properties of wool treated with multifunctional epoxides)。上述の理由により染色実験は別の機会に改めて行うこととした。
羊毛繊維はマーチンデール摩耗試験に供すると、フィブリル化し、小繊維状に解きほぐされて切断する。しかし、樹脂加工した羊毛は刃物で切ったように円形断面で切断されることが知られている。エポキシ加工羊毛についても未処理繊維と異なり、円形断面で切断された。これは繊維表面のクチクル細胞が樹脂で固定されるため、未処理繊維とは異なる応力を受けるためであると推測される。また、飽和食塩水中で処理した加工繊維のエンドポイントは未処理繊維よりやや上昇し、加工により摩耗性が改善されたが、水中で処理した加工繊維は未処理繊維よりはるかに少ない摩耗回数でエンドポイントに達した。これはクチクル細胞の先端の立ち上がりの大小に起因するものであった。この表面構造の違いは洗剤溶液中でのカーボンブラックによる汚染性にも影響を与えた。
羊毛繊維の最表層(エピクチクル)の損傷の度合を調べる方法の一つに付着した油脂の洗浄試験がある。損傷が無い場合は油脂の離脱はほとんど見られない。この方法を応用し、日本油化学協会法で汚染した繊維の洗浄性から、加工による損傷の無いことを確認した。

研究成果

• [文献書誌] 村岡雍一郎、岡真佐子、辻井正子、山崎隆、曽根健夫: "硫酸処理したポリエステル布の洗浄性と汚染性" 繊維製品消費科学. 35. 196-202 (1993)
• [文献書誌] Hiraku,ITO and Yoichiro MURAOKA: "Water transport along textile fibers as measured by an electrical capacitance technique" Textile Res.J.63. 414-420 (1993)
• [文献書誌] 村岡,雍一郎: "高分子量ポリスチレンの繰返し凍結/融解による分子鎖切断" 平安女学院短期大学紀要. 24. 69-74 (1993)
• [文献書誌] H.ITO,Y.MURAOKA,R.UMEHARA,Y.SHIBATA,T.MIYAMOTO: "Shrink-resistant properties and surface characteristics of wool fibers treated with multifunctional epoxides" Textile Res.J.印刷中.
• [文献書誌] Y.MURAOKA,H.ITO,R.UMEHARA,Y.SHIBATA,T.MIYAMOTO: "The physical properties of wool treated with multifunctional epoxides" Textile Res.J.印刷中.