本年度は、昨年度に製作した光音響検出システムの改良を進めると共に、光音響シグナルの特性を調べ、テクネチウム錯イオンについてその適用性を調べた。溶液試料をふくむ1cm角の石英セルを用い、レーザービーム照射位置変化に対するシグナル特性を調べた。その結果、横方向の照射位置に対してはあまりシグナルに大きな影響は認められなかったが、縦方向の変化では周期的にその強度の変化することが認められ、溶液内で発生した音響の反射等が影響することが分かった。また、ビーム位置とPZT検出器の相対的な距離を変えると、シグナルの発生する時間に遅れが観測され、溶液中における音速の確認がなされた。これは、ビーム位置において発生した音響をPZT検出器がとらえていることを示している。テクネチウムの適用では、Tc(III)のチオウレア(tu)錯体を対象とした。過テクネチウム酸とチオウレアは酸溶液中で定量的に反応し、Tc(tu)^<3+>_6を与えることが分かっており、レーザー出力としても効率のよい波長帯に吸収ピークが存在する。この錯体の濃度を変え、本法を適用した結果、10^<-6>〜10^<-8>Mという3オーダーにわたる幅広い濃度範囲で定量的にシグナルの現われることが確認できた。通常の吸光光度法と比較すると約3オーダーほど検出感度が向上する結果を得た。今後さらに装置の低バックグラウンド化を目指すと共に、他のテクネチウム化合物に対しても適用し、検出感度の向上に努める予定である。
|