本研究においては、環境中に分布する超微量の長寿命放射性核種^<99>Tcの検出を目指し、レーザー光音響法をそれに適用するためのシステム構築及び基礎特性の検討と共に、簡便な操作で溶液中のテクネチウムを定量的かつ高感度に検出するための錯化剤の検討も行った。レーザー光音響システムは、レーザー光源部、音響検出部、データ畜積・解析部の3つからなり、特に音響検出部については腐食性溶液について適用可能なように通常の石英セルを用いて測定できるように工夫をこらした。またデータ解析についてはその音響成分解析に高速フーリエ変換法を導入することによって複雑な音響シグナルを数値化し、定量的な高感度テクネチウム検出を可能とした。テクネチウムの錯化剤としてはチオウレア(tu)およびチオシアン酸(SCN^-)を選び、それぞれ[Tc(III)(tu)_6]^<3+>、[Tc(IV)(NCS)_6]^<2->錯イオンの生成反応を基礎的に調べ、レーザー光音響法の適用を行った。レーザー光強度の効率的に得られる500nm付近にこれらの錯イオンは比較的強い吸収を持ち、前者の場合は10^<-8>M、後者においては10^<-9>Mの濃度のテクネチウムを定量的に検出することに成功した。この際、テクネチウムの検出感度はナノグラム領域まで達し、感度のよい放射化分析法に匹敵する手法となりうることが本研究によって示された。通常の吸光分析法に比較すると100〜1000倍の検出感度を示すだけでなく、幅広い濃度範囲にわたって定量的なシグナルを与える。また、溶液中の化学種に対する情報が得られるという大きな特徴をもっており、環境中のテクネチウムの化学状態分析への適用が期待される。
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