研究概要 |
試作した迅速反応停止装置を用いてH^+,K^+ーATPaseの反応初期相のリン酸化反応を追跡した。リン酸化反応とトリプトファン蛍光増加の時間経過は一致した。H^+,K^+ーATPaseにNー〔Pー(2ーbenzimidazolyl phenyl)maleimideを導入することが出来た。ATPの添加でBIPM蛍光の減少と増加の可逆反応な変化が検出された。BIPM蛍光減少の速度定数は36/s、それより遅く光散乱強度の増加(20/s)も観察された。BIPM修飾標品のトリプトファン蛍光はATP添加後速やかに減少(38/s)後増加(21/s)する2相性を示した。トリプトファン残基を励起して得られるBIPM蛍光の減少の時間経過は36/sしかし減少の程度はBIPMプローブを直接励起して得られる程度より少なく、トリプトファン残基からBIPMプローブへのエネルギー移動が増加していることが示された。EP形成の時間経過はBIPM蛍光減少のそれと鏡像関係にあった。以上の結果はリン酸化酵素形成に伴ってBIPMプローブの結合した部位で微小環境変化が生じ同時にトリプトファン残基とBIPMプローブ間の距離が減少しその後光散乱強度の変化で代表される分子全体の構造変化が生じている事を示している。この様な発見の報告はなされておらず、H^+,K^+ーATPaseのエネルギー変換機構の解明にとって有力な手がかりとなると思われる。
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