本研究の目的は、児童の書字学習過程が科学的に分析できる書字教育用ワークステーションを開発し、教育工学的立場から書字の実技的訓練に必要な教示法を見い出すことである。本年度はこの研究目的に則り、研究をつぎのように推進した。 〔1〕書字実技の教示において必要とされる知識情報に関する検証を試みた。この知識情報の獲得には文字の形態と手や腕の運動との関連性の解析が必要である。そこで、書字における腕の動作を腕の各関節回りの複合運動と見なして力学的持性解析を行い、この解析結果を踏えて、書字における動作を再現できる計算機ソフトウェアの開発を進めた。 〔2〕書字教育用ワークステーションによる実技的な訓練効果を確めるためには、児童個々の運筆の特徴を正確に捉えることが必要である。そこで、従来のスタイラスペンに改良を加え、筆力検出のための力覚センサを内蔵した特殊ペンを製作した。また、これらのセンサー情報をAD変換器によりワークステーション操作端末に取り込み、ワークステーション上で運筆の特徴抽出ができるソフトウェアの開発を行なった。 〔3〕個々の児童の運筆の特徴をオンラインで捉え、効率よく教示メッセージを生成するためには、文字の筆画分解、筆圧、現場教師の実践的な指導方略を加味した書字教示用データベースの充実とそれを用いたCAIシステムと実践による評価が必要である。そこで小学校1〜2年を対象にしたデータベースの整備と教示用CAIシステムの開発をおこなった。その特徴は音声合成装置やノンキーボードのユーザインターフェースの良好なことである。 〔1〕〜〔3〕についての研究成果は、研究発表や図書において公表した。又今後も実践を重なて改良する。
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