1.中央アジアから出土したサンスクリット語の写本断片の中で未解読のものを調査した結果、まず、イギリスのIndian Office Libraryに保存されているヘルンレコレクションの中に『雑阿含経』のサンスクリット原典であるSamyuktagamaの断片を数点新たに発見することができた。また、ドイツのゲッティンゲン大学に写真が保存されているベルリンのトルファンコレクションの中にもSamyuktagamaの断片を数点新たに発見することができた。さらに、フランスのBibliotheque Nationaleに保存されているペリオコレクションの中にもSamyuktagamaの断片を数点新たに発見することができた。その他、旧ソビエト連邦の旧レニングラ-ドに保存されている中央アジア出土のサンスクリット語の写本断片集が最近出版されたが、その中で未同定とされていた写本が、Ajitasenavyakaranaというテキストの一部であり、これのギルギット出土のテキスト、漢訳、チベット訳との比較研究が課題として新たに浮かびあがってきた。 2.漢訳の大蔵経と『雑阿含経』の対応部を調査した結果、南方上座部の『法句経』、説一切有部の『法句経』、所属部派不明の『法句経』と以上の3部派の『法句経』が合糅されて漢訳された漢訳『法句経』の中の所属部派不明の『法句経』に相当する部分の中に『雑阿含』に対応する部分を新たに発見することができ、この所属部派が不明のためこれまでほとんど研究されることがなかった『法句経』の成立を解明する上で重要な資料が得られた。
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