研究概要 |
資料蒐集について打合せを行ない.関係機関に錯本増所蔵状況を照会し、直接調査を行なった。1991年7月京都大学図書館の江戸期写活を調来、12月には国会図書館(南谷)、92年2月に蓬左文庫他(馬渕)、八雲本降(南谷)を調査した。該当資料の約8割方をコピ-で入手し.既に架蔵されているものとあわせて.楽譜の構造分析を行ない.レパ-トリの江戸期における実際をコンピュ-タ入力し、雅楽曲目のデ-タ、ベ-ス化を開始(南谷及研究補助員)。他方,楽所日記その他から楽人の素人愛好家との関係などを解明する仕事を南谷が行なった。 67世紀の問に楽譜の構造で見られる特徴として.それまでの楽譜を複本作製したにすぎないものと.管絃用曲目を主として字した、新しい構成のものとの分化をあげることができる。これは楽人の舞楽用楽譜の他に管絃御遊の伝統を受けた.礼楽思想にサポ-トされた素人愛好家ー堂上公家のみでなく.広く一般士民にまで及ぶーのための楽譜が必要とされたことの結果である。これはまた楽所日記などで.楽人がそれら愛好家の要求にこたえて地方スリをし、また楽譜を写して送るなどの実例が見られる。こういったことは堂然雅楽演奏様式に影響する。熊沢瀋山,見原益行,太宰春台,松平定信などの記述から、雅楽が次第に緩徐化し、それが様式の変化に対して決定的な役割を果したことは明らかである(馬渕「糸竹初心集の研究」第2部店2章1礼楽思想と雅楽理念、夕2上演地録と演奏様式)が.それは地方で素人愛好家の雅楽実習の普及、一般化と相関することでもあったことは明らかである。(ミュ-ジックソフトによる演奏様式の実験は.4年度.マキントシュ購入をまって実施する。)
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