1.各種古写譜を京大図書館・国会図書館その他からコピーで取り寄せ(文献複写)古譜の構成(調分類、曲目配列順、曲目の取捨、等)をデータベース化し比較検討した。その結果(1)古譜の保存伝承を意図する忠実な写譜(複本作製)事業というものが存在し、これは江戸時代雅楽の実際とは関係がないものと認められる。(2)舞楽用と管弦用に分化する傾向がある。舞楽用は古譜の系譜につながるものであるが、楽科伶人の日常の使用のためのものであったのに対し、管弦用は、禮楽思想による「雅楽」のための、中上層武家の教養としての音楽実践用のもので、ここに一つの新しい演奏様式の発生の機縁が認められる。(3)したがって、調分類も変化し、管弦譜ではいわゆる六調子に整理されている。 2.マキントシュ(ソフトはCubase及びNotator)による試行の結果、演奏様式を最初に規定するものはテンポであり、リズム・パタンであるとわかったので、楽家録に記載されている打物譜パタンをすべて五線譜化して入力させ、それにとりあえず三管を、メリカリなし(平調越殿楽、壱越調武徳楽)、現行旋律によるもの(双調柳花苑、春庭花)の二通り入力させ(アルバイト謝金)、テンポを変化させて演奏した結果、盆踊りの平俗さから、いわゆる雅楽の荘重様式までさまざまな様式が出現した。この方向では今後も作業を継続する。 3.この様式の変化の裏づけとして、実際にどのような機会にどのような演奏者が何を演奏していたのかを、各種古記録から検証した。
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