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1992 年度 実績報告書

芸術活動における「心」と「身」-マルブランシュ美学の可能性-

研究課題

研究課題/領域番号 03610024
研究機関大阪大学

研究代表者

上倉 庸敬  大阪大学, 文学部, 助教授 (90115824)

キーワードマルブランシュ / デカルト / 身体 / 芸術 / 心 / 想像力
研究概要

マルブランシュはデカルトの「コギト」を受け容れるが、ヴァールも指摘するように彼の関心は思惟の働きにではなくて思惟されたイデアのほうにあった。知性と信仰を峻別するデカルトに対し、マルブランシュのほうは、信仰が哲学の手助けになると考えたからである。思惟されるものである延長実体が叡智的延長に他ならず、神の一面がこの叡智的実体であると見なすマルブランシュにおいては、したがって、イデアはデカルトにおけるように神の意志に従うものではなく、神の悟性の一部そのものなのである。人間の身体は延長として神のうちにあり、同様に人間の精神も叡智的世界を生きるものとして神のうちにある。マルブランシュにおける「身」と「心」の関係はすべてその源泉を、知性であり秩序である神のうちに見出すこととなる。このとき、明晰判明なイデアを直観するのは「心」であるが、当の「心」自体は暗闇のなかで感情によって認識されるよりない。いっぽう延長的実体はすぐれて叡智的実体であるから人間という存在者において「心」は「身」と区別されない。こうして、本質を表現するイデアに対し、人間の感情がその存在を告知するものとして着目されるのである。心・身のあいだに何の因果関係もなく、しかも本質的なるもの即ち対象が、主観より以前に場所を占めるとすれば、人間の所産はまったく人間の自由な意志によって生み出されたものである。意志による産出の行為は、きわめて可塑的な身体の一部である想像力によって遂行される。想像力はイデアの残した痕跡の刻まれている身体的な要素である。神の自由意志による創造が啓示によって知られるように、人間の制作行為は作品における想像力の活動によって知られるよりない。想像されたものという対象において、制作者と亨受者の感情が混淆するからである。この点でマルブランシュの感情論をリクールの想像力による芸術論に接穂する可能性を開くことができる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (1件)

  • [文献書誌] 上倉 庸敬: "芸術作品におけるリズムと時間" 待兼山論叢美学篇. 26. 1-20 (1992)

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公開日: 1994-03-23   更新日: 2016-04-21  

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