児童生徒の道徳性の発達を、彼らが学校教育場面で日常的に経験するさまざまな具体的規範・規則についての認知がいかに発達変化していくかという観点で検討するため、昨年入手した資料について分析を行った。 主要な結果は以下のとおりである。 (1)社会道徳的な規範は、どの学年でも規範性が高く、かつ義務的であった。またその傾向は小学校低学年生で高かった。 (2)学業達成の規範性は、中程度で学年による変動が少なく、むしろ志望的なものとして認知されていた。達成の数項目は、高学年で言い訳条件が良さを増幅するものとして働かず、詳細な分析の必要性が示唆された。 (3)慣習的手続きの規範では、小学低学年生の規範性が高く、かつ義務的と認知されていた。しかし、遅刻のように学校の規則の厳しさと関連して、中学生の方が高い規範性を示す手続き規範も存在し、生活実態に即した理解の必要性を感じさせた。 (4)規範性の高い児童は、規範を義務的に考えるかどうかでは明確な差は見られず、正当化条件でも規範逸脱よりは規範遵守を考える傾向にあった。 (5)小学低学年生では規範逸脱を認めず、高学年生では向社会性の条件下で、中学生は自己実現の正当化条件下で、規範逸脱を認める傾向にあった。小学2年生では手続きを絶対的なものと考えていたものが、小学5年生では愛他で逸脱を認め、中学生になると手続きの持つ価値を認めるようになると考察できる。
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