本研究は、幼児期において、次の4点についての2年間の縦断研究を行なう。(1)きちんとした読み書き以前の萌芽的技能、(2)(かなで構成された)単語や文の読み、(3)読み書きの機能の理解、(4)読み書きと読書との関係。(5)それらと家庭環境との関連。本年度はその第1年目として、幼稚園の3〜6歳(年少・年中・年長)児計150名に対して、6月に、かな文字の読み、かなからなる単語(自分の名前を含む)の読みをテストした。また、文字を含む主要な活動やその対象(文字の読み書き自体、絵体)についてその手順と働きなどの知識を尋ねた。絵本を読むときの読み方を調べた。並行して、幼稚園での絵本の読み聞かせ活動について予備的に観察した(本格的には来年度行なう)。6・7月に4つの幼稚園で親300名への質問紙調査を実施した。特に、家庭での文字・本に関連した活動をどの程度行なっているかと、親の文字・本に関した信念を尋ねた。1982年の1・2月に再度同じ子どもへの調査を実施した。項目は第1回と同様である(簡単な文の読みを加えた)。以上から、かな文字の読みの半年間での大幅な伸びが確認された。その特に最初に読まれる文字の要因は、子どもの名前、読みの易しさなどが効いているが、必ずしもそれで完全には説明されなかった。自分の名前からよみだす子どもがある程度見いだされた。文字を覚えるきっかけとして手紙が多く挙げられたが、これはこの幼稚園の実践(お手紙ごっこ)を反映していよう。読書機能の獲得の順序は次のように想定できた。まず、物よび人との関係において本をいじること、親が相手するこという「外生的」機能。次に、本を読むと親がほめてくれる、楽しいなどの行為の結果。第3に、特に知識を得られることが並行する機能として気付かれる。親は全般に読み聞かせを大変望ましいこととし、親の中であまり本を読ませない者は読ませる者と比べ、外生的機能をより重視していた。
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