研究概要 |
本研究の目的は,特に予期的事態における反応時間(RT)と時間評価(ET)の相関関係を実験的に吟味することである.また,併せて時間体験の因子分析的研究も行い,時間が意識される生活状況を分析した. 【実験研究】 従来はforeperiod(実験者の「ヨーイ」の合図後小光点が点灯されるまでの時間)を無課題の反応待機時間としたが,本研究では難度の違う逆唱課題をさせた.用いたforeperiodは12,16秒,負荷課題は2桁と4桁の数列逆唱である.被験者はforeperiod中に2桁あるいは4桁の逆唱を行い,課題終了を示す光刺激点灯に対して素早くスイッチを押しを行う(RT).続いてそのforeperiodを標準とする時間評価を再生法で測定する(ET).本実験も非予期的事態と,予期的事態で測定する.被験者は10名.試行回数は各foreperiodにつき20回である. 結果の概要: (1)RTは無課題時よりも僅かではあるが遅れ,変動もやや大きくなった.4桁逆唱時のRTは2桁時よりも長い.それに対してETは4桁時の方が短い. (2)これらの傾向は予期的事態と非予期的事態でほぼ同じであった. (3)個人別RTとETの相関係数をみると,予期事態で統計的に有意な相関係数を示す者が多かった.しかし,正負の符号が混在し,RT-ET間の一義的関係を推量することは困難であった. 【調査的研究】時間体験に関する40項目の調査とYG性格検査を実施した.因子分析により時間不安・将来展望・時間活用性・時間観と名付けた4因子を抽出した.4因子別の平均評定値プロフィールによる性差や性格型の違いを検討した.また,因子得点を指標に吟味した結果では,(1)性差がよく現れるのは将来展望と時間観の因子である,(2)性格型の違いが出たのが時間不安であり,特に不安定・不適応群において時間不安を共通因子とする傾向が強い,(3)時間活用性についてはD型(安定・適応・積極型)群で共通因子とする傾向が強いなどの結果が得られた.
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