研究概要 |
本年度に遂行された研究及びその結果については,以下にまとめるとおりであった。 1. 海外帰国子女の学級への適応 平成3年4月に帰国し小学校へ入学した帰国児童(6年生;2名,5年生;1名,3年生;2名,2年生;1名)及びその受け入れ学級の児童177名が本研究に被調査者として参加した。児童の人間関係や適応感を検討するために,児童用学校環境適応尺度と心理的距離地図(P.P.M)が用いられた。調査時期は,転入学後,2週目・4週目・2月目・3月目・5月目であり,計5回の調査が実施された。 その結果によると,対人関係においては,よりどころとなる人物(アンカ-パ-ソン)がどの帰国児童にも存在すること,友人は必ずしも固定的ではなく,転入後5ケ月間にかなりの変動があること,友人関係が調査時期を追って,複雑なネットワ-クを示すようになること,そして帰国児童の学級内での社会的地位も上昇傾向にあることがわかった。適応感尺度上の変化も,こうした変化が反映され,相対的に向上することが示された。こうした結果は,Wapnerらの人間・環境相互交流論の仮説に対応するものと考えられた。 2.帰国児童及びその母親への面接 上記の調査と平行して,平成3年7月と10月に当該の帰国児童とその母親を対象とし,それぞれ別個に面接を行なった。その面接内容は,被面接者の許可を得て録音された。この面接内容から,児童の多くが,比較的早期に適応することが推察された。また,母親が心配する内容は,学業や友人関係に集中することが伺えた。不適応と思われる児童は,1名であったが,それはP.P.M上でも特異なパタ-ンを示していた。
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