研究概要 |
本年度は,上記研究課題のもと,まず援助行動に関する実験的研究を行った。被験者は,保育園の年中(5歳)児70名と年長(6歳)児70名の合計140名であった。実験変数としては,(1)モデリング,(2)動機的コスト,(3)人的環境の3つであった。(1)については,援助モデル:援助行動をする紙芝居を見る群と,中性的行動をとる紙芝居を見る群,(2)については,被援助者が困窮を訴えているとき,迷路遊びが課される群と,迷路遊びを待っていて,さし当り為すべきことがない群,(3)については被援助以外に他者1名が周囲に存在している群と,存在していない群であった。被援助者の困窮状況としては,遊具の片づけがむずかしく誰かの援助が必要とする事態であった。実験の流れとしては(1)モデリング,(2)社会的相互作用,(3)動機的コストの操作,(4)実験事態(援助行動を必要とする事態)であった。依存変数としては,大別して援助行動の有無と言語反応であった。援助行動についての結果の概要は次の通りである。(1)年中児・年長児ともに,動機的コストが低い群(さし当り為すべきことがない場合)の援助行動が,コストの高い群(課題が与えられている場合)に比べて,より多く生起した。(2)他者が周囲に存在している場合よりも,存在していない群においてより多くの援助行動が生起した。(3)モデリングの効果は,他者の存在,特に動機的コストに低い場合の他者が存在する場合にみられた。保母による行動評定についても資料を収集した。言語反応についても,援助行動とほぼ類似の反応傾向が見られた。総じて,モデリング効果よりも動機的コストの効界が優勢であった。
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