研究概要 |
本研究では、3歳以前の幼児が母親の行った遊戯的からかい行為に潜在する遊戯の意図を読み取れるかどうかを検討した。遊戯的からかい行為は母親が子どもにその遊戯の意図を伝達できるかどうかによって、遊戯的に不快とに子供の反応を分岐させると予想される。この遊戯の意図は、遊戯的からかい行為に随伴するプレイサインによって伝達されるであろうと仮定した。そこで、15分間の母と子の自由遊び場面を設定し、そこで出現した遊戯的からかい行為をプレイサイン無し(不意)、誇張動作によるサイン(演技)、表情によるサイン(楽しさの表出)に分類した。同時に、遊戯的からかい行為に対する子どもの反応もまた不快、注視、笑い、ふりに分類し、笑いとふりを母親の遊戯の意図を読み取れたことを示すと定義した。そして、母親のサインのモードと子どもの遊戯の意図の読み取り成功率との関係性を調べた。対象は、28組の1歳及び、2歳母子で、おおよそ8カ月の間隔で2回の縦断的測定を行った。 結果から次のことが見いだされた。【.encircled1.】1歳児は母親の行為に注視だけで反応した。【.encircled2.】2歳児は母親が楽しさを表出した場合にその遊戯の意図を読み取れた。【.encircled3.】3歳児は母親の演技的からかいからも読み取れた。また、2・3歳児の母親は演技的からかい行為や、面白さを追求する仕方を多用した。 これらの結果は、母親の遊戯的からかい行為の情動的側面、母親のふりの理解とこどものふりの産出との関係、最近の認知論的「心の理論」で示されている年少幼児の他者の心の理解の困難という結果と、本研究で得た結果との相違点が論じられた。最後に、我々の先行研究(Nakano and Kanaya,1993)での0歳児の結果と結び付けて、幼児期前半までの母親の意図の理解の発達過程を提示した。
|