研究概要 |
本研究は、日本官僚制の役割の変化を、上級官僚集団のキャリアと役割認知・行動を通して解明することを主題とする。この達成のため、昭和30・40・50・60年版の『職員録』から、本省庁の局筆頭課長以上の官僚を抽出し(外務省・法務省を除く)、その出身背景、官僚経歴、退官後のキャリアなどを、『職員録』『人事興信録』『全国官公界名鑑』他の各年版を追跡して調べた(分析可能数は、30年:400名、40年:454名、50年:541名、60年:660名の計2,055名)。また、退役官僚(3名)に面接し、官僚の職業的社会化と政策活動、官僚制の役割評価に関するヒアリングを行なった。デ-タの収集・分析作業は継続中であるが、次に知見のいくつかを列挙する。 1.日本官僚制の中枢官僚の平均年齢は44歳から51歳(30年→60年。以下、同じ)へ、世代のモ-ドも40歳代前半(42%)から50歳代前半(54%)に移行してきた。2.中枢官僚には東京出身者が最も多く、しかもそれは18%から27%へ増える傾向にある。反面、四国出身者は最も少なく(6%→4%)、また、近畿・九州出身者も減少してきた(いずれも14%→10%)。3.出身校は東大が圧倒的に多いが、その比率は8割から7割へと低下してきた。学部別では、法学部の低下(71%→64%)と経済学部の増加(5%→11%)が相伴している。4.入省年齢は26歳から24歳に、学卒後の官僚外職歴者は2割弱から6%に低下した。5.在官年数は総体的に26年から31年に、退官職位別では、事務次官:28年→34年、局長:25年→31年、地方支分部局長:25年→29年へと増加した。6.退官後の最初の転出先は、特殊法人(公団、事業団、分庫など)が1/4を占め、国会議員・公選首長などの政界がこれに次ぐ。特殊法人での職位は退官時の職位と関連し、事務次官は総裁・理事長に、局長・審議官支他は理事・監事に就任する傾向がある。また、民間企業転出者はまず顧問・取締役に、後に副社長・社長に就任するケ-スが多い。
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