研究概要 |
本研究は、住宅政策が都市政策にリンケ-ジする様相を、「空間の戦略」という観点から分析しようとするものである。ここにいう「空間」とは、物に囲われた部分のみならず、非物体的に物質性としての空間である。これによって、ダウンゾ-ニングの計画技術にみられるように、容積率の操作性を、空間の戦略の一つのフェイズとして分析しうるのである。このようにして、一方では、神戸市の住宅政策を極とし、他方で福山市の住宅政策をもうひとつの極とすると、リンケ-ジの様相に4つのフェイズが存在することが明らかになった。(i)住システムが量的供給を軸としている「合理性」,(ii)都市内部での住宅地域の空間の安定化を確保しようとする「合理性」,(iii)インナ-シティ問題のように、既成市街地再開発における「合理性」,(iv)「総合設計制度」の運用にみられる「合理性」である。(i)は、専ら、自助を福祉の配分の合理性が問題とされ、古典的な住宅政策の体系のなかで完結している。(ii)は、建築協定制度のように、住環境という公準のもとに、空間の安定化をはかる「合理性」であり、私的所有の自由と対立する側面をもつ。一般に、集合住宅施設は、この段階の「合理性」の闘争の場であり、これとの対応の上で問題化すると、個と全体との独特の関係性があらわれてくる。(iii)は、空間の流動化をはかる「合理性」であり、たとえば、不動産の証券化にみられる法技術が実体化しようとする局面であって、資本と土地の対立の場として「合理性」が構成される。(ii)よりも、公益性、公共性がとわれる。(iv)は、ダウンゾ-ニングもその一例であるが、空間の操作性によって、都市形質の形と可能性を構想するもので、ここでは、(i)・(ii)・(iii)の基本的な要素を組みかえて、住宅政策が都市政策となってくる。以上のフェイズが重要であり、これらの相互関連と独立性が分析されるのが、次年度の研究である。
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