研究概要 |
本年度は在宅高齢者の福祉サ-ビスに対するニ-ズ類型として,とくに虚弱な独居高齢者と家族同居の痴呆性高齢者を対象とし,それぞれの保健・福祉サ-ビスの利用の比較を試み,ケアモデルに対応する社会的ケアの体制について検討を行った. その結果,現状の在宅サ-ビスはメニュ-の多様化と供給多元化が強調されるにもかかわらず,投入に対応する利用効果は必ずしも明確には得られなかった.主な問題点とその理由は次のとおりである. 1.それぞれのサ-ビスの絶対量が不十分で適切なケアモデルを充足するサ-ビスが利用できず,充分な利用効果を示すに到らない. 2.ホ-ムヘルプ,食事サ-ビス,デイケアなどのサ-ビスが事業として提供されていても,個々の利用者にニ-ドに適応する適切なサ-ビスの組合せに対するアセスメント体制とケア計画を考案する責任体制を確立していないため,必ずしも利用効果に反映されていない. 3.ケ-ス・マネジメントを欠いた供給多元化は利用者に選択の多様性を保障するという効果より,サ-ビスのインテグレ-ト効果を妨げる場合が多い(とくに独居高齢者ケ-スに問題が指摘される) 4.痴呆性高齢者のケ-スではケアセンタ-利用者の福祉サ-ビス利用効界が明らかにされたが,その場合にも保健・医療サ-ビスとの組合せ効果はさらに顕著であることが示された. 5.一定の事業量として提供される在宅サ-ビスは,専門職員によるチ-ムアセスメントにより,投入効果をより高める結果となる. なお,本研究ではさらに投入するサ-ビス量と費用効果の関係を検討することを目的にしているが,その研究過程には医療における投薬効果の測定のように,在宅サ-ビスも制度の枠以上に試験的に投入できる方法を模索している.
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