今年度は新宗教の性別役割観に関する文献資料の蒐集、および女性信者からの聴取り調査を行なった。性別役割観に関連する項目についての比較検討は、まだ分析の途中であるが、資料を蒐集した対象教団は、次のとおりである。金光教、大本教、あたらしい道、GLA、自成会、生長の家、霊友会、実践倫理宏正会、モラロジ-、妙智会、立正佼成会。 性別役割観については、その宗教が創唱された時代性をつよく反映している。幕末維新期から明治期にかけて創唱された新宗教は、むしろ政治的・経済的転換期にあって、女性をとりまく俗信や、夫婦の対等な協力関係を強調している。しかしながら、当初のおいては大きな意義を担った思想も時代がくだるにつれて変容し、一般的には、性別役割観を強化するように作用した。新宗教では、男は外、女は内という性別役割分業観は根強いが、戦後の男女同権思想の流布に危惧を感じ、女性の社会進出や家庭外就労を男女の役割の危機として、特に避けるべきものとしてとらえる傾向は、「日本主義」を掲げる教団に顕著にみられる。女性教祖に比べ、男性教祖は女性の本質を母性にあると見、母性礼賛は著しい。女性教祖の場合、みずからの位置付けに男性性を付加し、両性具有的である。布教を重視し、女性の布教力に依拠している教団では、女性の家庭外就労などの時代の変化に敏感で、その流れの中でどのように女性を活動の戦力としていくかの模索が見いだせる。女性が布教者になるということは、「女は内」という規範を逸脱し、「女性性」に加えて「男性性」を兼ね備えざるをえない。新宗教は女性を既成の価値観の中に押し込め、呪縛する側面が強調されることが多いが、必ずしもそうではなく、社会との接点の中で、囚われから解放し、強い「自我」を形成していく面もある。
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