本年度(1992年)は筆者が1975〜79年に標準化した日本版デンバー式発達スクリーニング検査(通称JDDST)の調査対象となり、学童期にも追跡でき、現在青少年期に達した子どもとその家族のうち沖縄群を対象として自己概念とそれに関与する諸因子を調査した。また、これらの結果を東京都群の結果(1991年実施)と比較し地域差の有無を検討した。1.回答者数:質問紙法と面接法による有効数は子ども106名、母親54名、父親48名であった。2.健康状態不良の者:子ども11.3%、母親7.4%、父親10.4%あり、これらは東京都群と比較して殆んど差はなかった。3.自己概念の地域差;(1)子どもの自己概念総得点と各領域別得点を性別および全体で東京都群と比較した結果、女子の各領域別得点においてのみ有意差があった。すなわち、沖縄群女子は東京都群女子に比べて“勉強・仕事"領域の平均得点が有意に高かった。(P<0.05)。(2)母親の自己概念総得点と各領域別得点を東京都群と比較した結果、総得点に差はなかったが、領域別では“自己価値"と“ユーモア"の2領域に差があり、いずれも沖縄群が低い値であった。(3)父親の自己概念総得点と各領域別得点を東京都群と比較した結果、母親の場合と同様に総得点に差はなかったが、“知性"の1領域において沖縄群の平均得点が有意に低かった(P<0.05)。これら女性の自己概念各領域にみられた沖縄群と東京都群の差は娘と母親の時代差を示唆しており興味深い。4.関心事:父親・母親の第1位は健康、第2位は学業成績であったのに対し、子どもの第1位は学業成績、第2位は就職・仕事であった。沖縄群の子どもおよび父親・母親ともに東京都群と同様に学業成績が大きな関心事となっており、学歴社会の渡透は沖縄県の離島にも及んでいることが明らかになった。来年度は農山村において調査を実施し、比較検討することにより考察を深める予定である。
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