1.昨年度に引き続き、ペスタロッチの書簡集及び著作全集のテキストファイル化を進めた。書簡集全13巻及び、校訂版ペスタロッチ全集全30巻のうち、とりあえず研究題目に密接に関連する6巻について読みとり作業を完了した。ただし、数百万円の高級機械による作業と違い、購入できたOCRソフトによるテキストファイル化においては、誤字、脱字等が少なからず含まれるため、その訂正作業にかなりの時間が必要であり、現在も随時、完全なデータベース化を進めている。いずれにせよ、本年度において、市販の検索ソフト、あるいは、いわゆる「フリーソフトウェア」に含まれる優れた検索ソフト等の組み合わせにより、自由自在にベスタロッチの書簡や著作をキーワードにより検索し、効果的に検究を進めるための暫定版データベースは部分的ながら完成させることができた。 2.上記の作業と並行して、ペスタロッチの宗教、道徳教育思想研究の古典的文献を集め、その分析を進めた。そこから見いだしたいくつかの視点を中心に、上記の暫定版データベースを利用した実際的研究も進めてきた。ペスタロッチは自分の学園での教育において、宗教教育を重視しながらも、当時の一般的風潮とは異なる実践をしていた。つまり、宗派主義的な宗教教育に固執せず、むしろ宗派を超えた宗教教育を志向していた。その際に、カトリック教徒に対するきわめて柔軟な彼の立場が注目されるのである。データベースの利用によりこの点を解明する手がかりを得ることができた。これらを含め、本研究の課題である「ペスタロッチの宗教・道徳教育思想形成史に関する研究」を近いうちに論文としてまとめる予定である。
|