1.日本諸学振興委員会、文部省思想局・教学局等の動向に関して、引き続き国立教育研究所等から資料の収集を行った。東京帝大教育学研究室の戦前・戦時下の動向に関する史料も相当程度収集し、文献目録を増補させた。 2.前年度に概成させた「人名データベース」を補うべく、日本諸学振興委員会教育学会参加者・報告者それぞれの戦前・戦時下・戦後の著作等を精査した。この過程で、日本諸学振興委員会教育学会は従来の研究者組織と比して幅広い範囲から参加者・報告者を集めているという性格が明らかになった。しかしながら、そのことは一方で多彩な参加者・報告者を単に「数」の面から捉える統計的処理の困難さにも通じ、今後に課題を残している。 3.日本諸学振興委員会の哲学・国語国文学・歴史学・経済学・地理学・芸術学・法学・自然科学の各学会の開催状況と報告内容に関しても検討を加え、各学界における研究者の組織化状況にとの関連での分析にも着手した。 4.日本諸学振興委員会教育学会と対照させるために日本教育学会(1941年創立)の創立経緯等に関しても分析を行い、後者がより自由な学問研究の場を目指して創立されながら内容的にはさほどの差がなくなっていたこと、しかしながら例えば西洋教育学領域の研究者は意識的に日本教育学会の方に参加するような「使い分け」も見られたことなど、両者の性質の異同が明らかになった。なおこのテーマに関しては、折しも日本教育学会の創立五十周年事業との関係で、同学会の機関誌「教育学研究」誌上に発表の機会を得た(裏面参照)。 5.4に関連して、日本諸学振興委員会教育学会・日本教育学会の当時の関係者である荘司雅子・林友春・三井為友の各氏から聞き取りを行った。
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