発達の初期から眼が見えない先天盲の子どもは、身の回りの空間的な位置関係を把握することが極めて苦手である。そのため、このような子ども達に対しては、盲学校に入学後様々な方法を用いて空間認識機能を高める教育がなされている。しかしながら、歩行の手掛りとなる地図上での位置関係や図形、文字などの構造をなかなか理解できない子どもが多く、このような指導が就学以前の早期から行われる必要性が叫ばれている。特に、空間認識の発達にとって重要となる自らの体を中心とした空間的枠組みの習得を幼児期初期から促すことが必要であるとされている。ところが、従来、このような盲幼児における空間認識機能の評価方法はほとんど検討されておらず、またそのことと関連して、指導も試行錯誤的に行なわれているだけであり、評価に応じた体系的な指導がなされていない。 そこで本研究は、盲児を対象にして、室内の移動や物に手を触れることを学ぶ過程、幾何学図形の認知や表現過程、さらには空間の位置に関する推理方略の特徴等に関して、盲児とのやりとりを通して明らかにし、盲児における空間認識機能の発達過程とその形成を促すための有効な指導方法について検討を加えた。その結果から、図形描画の過程に必要な触運動操作の種類、描画行為獲得過程における行為評価機能の変化、描画行為形成の方法、空間推理方略の特徴、歩行や点字学習における空間枠組みの基礎的学習過程等を明らかにした。
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