国連は1990年をもって「世界識字年」として定め、西暦2000年までに、各国の式人非識字率を1985年当時の50%の水準にまで削減する目標を設定した。時あたかも、ここ数年来、軍事費の削減は世界的な動向となりつつあり、これまで開発途上国での人材開発政策上の最大の障壁となっていた財政上の制約という客観情勢は、ここに大きく変化するきざしを見せている。アジア諸国にとって、長年の懸察とされてきた人材育成の基盤を整備・充実させる絶好の機会が到来しようとしている。本研究は(1)アジア諸国における人材育成政策の基幹をなしている初等・中等・高等教育についての基礎資料を収集すること、(2)先進諸国、ユネスコ、世界銀行などの諸機関が、アジア諸国を対象に実施してきた教育援助政策に関する基礎資料を収集することを目的としている。 平成3年度には基本文献の収集・分析と、関係専門家からのヒアリングを実施したが、これらから得られた知見をもとに、論文「国際機関と識字政策の展開」(平成4年3月・刊行予定)をまとめた。また教育開発専門家からのヒアリングに関しては、平成3年9月広島大学で開催された「1990Suninar on Education for All」に参加し、アジア諸国での初等教育の普遍化に対する各国の取り組みについて、直接情報を得ることができた。また平成3年10月には、ユネスコ・国際教育計画研究所所長ジャック・ハラック博士を名古屋に招待し、「教育計画の最近の動向」という評題のもとに構演を願った。それと同時に同研究所の最近の研究動向について情報を得るとともに、同研究所での専門家のトレイニングに関する情報について詳細な説明を受けた。また平成3年8月にはハ-バ-ド大学国際開発研究所より、教育開発関係のデ-タベ-ス作成への参加の依頼を受け、その作業に着手し始めた。
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