研究概要 |
最終年度に当たる本年度は,これまでの研究を取りまとめることを中心とした。その結果,最終報告書に記載する下記の4本の論文について,最後の検討を行った。その4本の論文とは,研究代表者による「Human Resource Development in Asia」,Naseer U.Jamadar"Education and its Role on Development in Bangladesh",浜野隆「石油危機以降の教育停滞現象-発展途上地域における初等教育を中心に-」,加藤徳夫「フィリピン・タイの基礎教育の普及に対する教育開発と協力援助-世界銀行による協力援助から多国間援助への移行」である。第一論文では過去3年間の研究成果をもとに,アジア諸国が直面する人材開発政策についての概観を行い,あわせて今後の教育援助政策のあり方について吟味を行った。第二論文ではバングラディシュに焦点を当て,BRACなどのNGOの教育政策にも考察を広げながら,バングラデシュの基礎教育の構造と課題を分析した。第三論文ではオイル・ショック後に現れた初等教育の停滞傾向に焦点を当てて,その現状と背景について分析を行った。第四論文ではタイ・フィリピンを対象とする教育援助政策の展開を中心に,それが初等教育・中等教育に与えたインパクトについて分析を行った。 それと平行して,本研究の過程のなかで次第に明らかとなった先進諸国の教育援助政策のあり方に関する分析に着手した。ジョムティアン会議以降,国際的なレベルで議題となったのは,今後の教育援助政策のあり方をめぐる議論である。従来、先進諸国の教育援助はもっぱら高等教育もしくは職業教育を対象としてきており,初等教育はほとんど無視されてきた。しかしながら開発途上国の初等教育の普及・定着が国際的なレベルでの重点課題となるとともに,先進諸国はこれまでのような援助政策では,新たな事態に対応しきれないことが明らかになった。現在は、その変化の過程を分析しはじめている。
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