研究概要 |
今年度は、日本の事例研究とアメリカの「学校単位の経営管理」(schoolーbasedーmanagement,SBM),「学校単位の予算編成」(schoolーbasedーbudgeting,SBB)を中心に研究を進めた。日本の事例研究では、教育予算編成と執行において独自の試みを進めている東京都中野区の調査研究を行った。中野区で昭55年度から導入された教育委員会予算の枠配分方式は、地教行法第29条の「教育委員会の意見聴取」規定にもとづく運用としておこなわれているものであり、教育予算の基本的経費について教育委員会に予算編成上の調整を委ねるものである。この方式は、教育委員会の自主的判断と裁量権限をより十全に機能させるために予算編成の側面から配慮したものであると同時に、教育予算編成への住民参加、統制の一形態=教育財政民主主義を担保しつつ、教育予算の見直し=スクラップ&ビルドを含めて教育政策の年次・中期計画と予算執行の効率的な運用を図るうえで有効であるように思われる。また、この方式を学校レベルに適用した学校予算フレ-ム方式も、幾つかの問題を抱えながらも学校の自主的で効率的な予算執行をすすめるうえで示唆に富む。これらの予算編成・執行の方式は、中野区だけでなく他の自治体でも試みられているようであり、次年度は調査対象を広げて研究をすすめていきたい。前記の教育委員会及び学校に教育予算編成・執行に関わる一定の裁量郎を付与して、効率的な予算執行を図るという試みは、アメリカのSBM,SBBにも共通にみられるものである。これらは、教育予算等の基礎的政策決定の単位として個々の学校を位置づけることで、組織体としての学校の能力・機能を高めて学校の一層の効率性をつくりだそうとするものである。今年度は、SBM,SBBが関心を集めてきた背景・理由、各州・学区での取り組みとその実態、問題を州法や各種の報告書を中心に分析・整理した。その総体的評価は今後の研究課題である。
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