研究概要 |
平成3年度は、11に示した3編の論文を発表することができた。これらは時代的には、アメリカの19世紀から20世紀初頭までを扱っている。即ちアメリカの大学が世界的な大学へと成長をとげる時代を主題とした。 19世紀後半のアメリカ国立大学設立運動は、ジョン・ホイトを中心に展開された。全米教育協会(NEA)を舞台としてホイトは活躍したが、そのホイトの国立大学設立案は、ヨ-ロッパの大学との競合から生まれた発想である。特に研究機能を重視した、いわば大学院大学の提唱といってよい。 ホイトの鋭く対立したのは、ハ-バ-ド大学学長であったチャ-ルズ・エリオットである。若きエリオットは、なぜ国立大学の設立に反対したのであろうか。つまるところエリオットは国家の支配を恐れたのであり、政治の大学への介入を恐れていた。これは当時最大規模の私立大学の学長としては、むしろ当然の反対であったとしても、この反対論は影響力をもったのであった。 しかし国立大学設立の夢は、19世紀後半の様々な大学改革によって、その夢の内容の多くが実現されたが、その夢自体が減滅した訳ではない。20世紀に入ってからは、ミネソチ大学ウェスレ-教授によって引きつがれ、なお活発な設立運動が展開された。ウェスレ-は、国立大学を国家に直接サ-ビスを提供する大学として構想した。この構想は、20世紀アメリカ大学の社会的機能としてやがて定着する大学観となっていく。 以上3編の論文と通して、19〜20世紀のアメリカの大学が,いかにヨ-ロッパの違大なる大学に追いつき、追い越すかという過程に、国立大学の設立運動の検長を分析することによって明らかにした。
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