平成4年度においては、研究課題のうちの重要な部分に相当する部分、すなわちアメリカ型の大学の創設に関する研究に主として取り組んだ。アメリカ型とは、アメリカの大学に固有な教育組織や教育方法を指し示すが、例えば大学院や専門大学院、コミュニティー・カレッジ、リベラル・アーツ・カレッジなどである。 しかしこうした教育機関の類型はすでに良く研究されている。そこで本研究では、アメリカ国立大学を創設しようとした理念、すなわち研究を重視し、巨大な大学で、国家の顔としての大学、アメリカ大学の統合としての大学理念が、アメリカの新しい大学の創設にどのような影響を与えているか、実例を模索しつつ研究をおこなった。そこでユダヤ系のアメリカ人がいかにアメリカ型の大学を創設したかを例に取り、1948年に設立されたブランダイス大学(Brandeis University)を具体的に考察した。 19世紀、20世紀と増加したユダヤ系の移民にとってアメリカの大学は、決して彼らを平等に扱ってはくれなかった。入学制限などは有力な大学でも採用された入学政策であった。こうした時代を経て、ブランダイス大学は、移民集団としてのユダヤ系のアメリカ人社会のなかに、ユダヤ教とは密接に関係をもたないで、むしろ世俗的な大学として、宗派の影響を廃した、ユダヤ人社会の広い支援を受ける私立大学として設立された。つまり、アメリカの大学や国民をつなぎとめる求心力の強い国立大学と重なる理念が働いていたと考えることができる。 すでに国立大学の設立運動に関しては研究を進めて来ていたので、一応両課題に取り組むことができたが、残念ながら両課題を有機的に関連づけて研究するという本来の方針は、時間的な制約もあって十分果たせなかった。これからの課題としたい。
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