研究概要 |
本年度は、日本の私立大学の授業料について実証的デ-タを収集し、授業料水準を規定している要因について検討を加えることを中心に研究を遂行した。デ-タは、受験雑誌、大学基準協会『大学一覧』、『全国大学一覧』などから文学部、経済学部、工学部、医学部の4学部について収集した。また4学部について、入学金、授業料、初年度納付金、入学難易度、設立年数、入学定員、在籍学生数、専任教員数、専任兼担任教員数、大学学部数、定員超過率、教員一人当り学生数の12変数のデ-タを求め、それらの相関係数を計算した。また4学部について授業料を入学難易度に回帰させた。結果は以下の6点にまとめられる。 1.1989年度文学部、経済学部、工学部、医学部の授業料は平均してそれぞれ46.3万円、46.5万円、63.3万円、213.8万円である。 2.文学部、経済学部、工学部において、入学難易度が高いほど授業料が高くなる傾向がある。 3.授業料を入学難易度に回帰させ、限界授業料収入を求めると、文学部3,781円、経済学部5,016円、工学部11,193円となる。これは、入学難易度が一単位増加すると授業料がいくら増加するかを示している。 4.医学部は入学難易度が高い大学ほど、授業料は安くなる。 5.経済学部において授業料と入学定員、在学者数との相関は見出せなかった。 6.私大経済学部において、授業料の高い学部ほど教員一人当り学生数は多くなる。日本の私大経済学部において学生は教育条件を考慮に入れて授業料を支払ってはいないことになる。
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