平成3年度4年度に行った理論的検討によって、私立大学の授業料規定要因を分析するには、大学における費用の構造を明らかにする必要が確認できた。そこで平成4年度は、日本とアメリカにおける大学の単位費用の分析を中心に研究を進めた。具体的には単位費用について、日本とアメリカの時系列データを検討した。その結果以下の点があきらかになった。 1.アメリカの高等教育において単位費用は、一貫して上昇してきたわけではない。長期的には、1930年から1950年の間に下降しており、1970年代は比較的安定している。また最近は上昇に転じている。 2.アメリカの高等教育において単位費用の減少時の原因は、教員給与の下降によるとされる。 3.日本における単位費用は、1960年から1989年の間、私立大学は一貫して上昇しているのにたいして、国立大学で伸び悩んでいる。 さらに日本の私立と国立大学の単位費用の変動を3つのモデルを用いて検討した。(1)投入モデル:単位費用の変動を労働集約度と生産要素価格によって説明する。(2)産出モデル:単位費用の変動を規模、カリキュラムの多様性、大学院教育の水準によって説明する。(3)収入理論モデル:単位費用は授業料収入と国庫補助金収入によって規定されると考える。この3つのモデルを単回帰、重回帰式によって推定すると私立大学は投入モデルと収入理論モデル、国立大学は投入モデルと適合することが判明した。
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