平成5年度は、本研究の最終年度にあたり、大学の授業料及び大学制度に関して日米比較研究をおこなった。前年度の分析で、日本とアメリカの私大システムにおいて入試難易度が高いと、授業料も高いという事実を確認できた。入試難易度の高い大学は、より威信も高く、質も高い(少なくとも優秀な学友を得る点において)と仮定すると、日本とアメリカの私大システムにおいて、授業料は通常の経済市場と同様の価格体系になっている。 市場主義のなかでどのように育英と機会均等を達成していくかは、高等教育政策の中で重要な課題であるが、その課題達成の方法は日本とアメリカで大きく異なる。アメリカにおいて、育英は、奨学金によってなされているといってよい。質の高い大学教育を多様な階層に開放することによって、優秀な人材を養成しようとする政策である。もう一つの政策課題である機会均等は、これも強力な奨学金と授業料の安価なサービス志向の強い州立大学の拡大、との組合せによって行われているとみてよい。つまりアメリカにおいては、奨学金という学生に対する個人援助によって育英と機会均等を達成しようとしている。 日本において育英と機会均等の達成には、国立大学の果たした役割が大きい。つまり育英においては、「国家ノ須要」の充足という形で、伝統的に、官立、国立大学でなされてきた。また機会均等については、安価で地域近辺に存在する地方国立大学がその役割を担った。しかし国立大学の収容力は小さく、その役割は限定されたものでしかない。日本においては、育英はともかくとして機会均等の政策課題に問題が残る。
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