日英比較の結果、以下のことが明らかになった。 (1)現在、日本は研究活動を積極的に拡張しようとし、英国はむしろ研究活動の規模を現状維持ないし圧縮しつつ効果的に運用しようとしていて、政策の方向がかなり異なる。したがって、現在の日英を直接に比較するよりも、研究活動の拡張期にあった少し古い時代の英国と現在の日本を比較するほうが適当である。 (2)英国では、特定の研究組織に集中的に資源配分がなされて、いわゆるセンター・オブ・エクセレンスが形成されていた。そうした組織が日本においても形成されることが望ましいが、人的流動性が確保されない状態でそうした組織を設立しても、短期間のうちに陳腐化する危険がある。それゆえ、「見えない大学」のネットワークとして形成することが現実的である。 (3)とくにすぐれた研究組織が形成されるさい、英国では研究評議会を経由したいわゆる二重の資源配分方式が効果的に機能していた。すなわち、研究評議会を経由した資源配分が分野間の競争を促進して新しい専門分野の形成をうながし、新しい研究領域をきりひらいた組織のうち、成功したものがセンター・オブ・エクセレンスとなっていた。 (4)日本の科研費は、校費のように一律に配分する方式よりもはるかに望ましいが、専門分野が研究費の枠として機能し、その枠内で研究計画を評価して配分するために、分野間の競争を促進するようにあまりなっていない。科研費の制度のなかでは、重点領域研究がそうした分野間の競争の場となる性格をもっているが、その特徴を明確化することが適当ではなかろうか。
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