本研究においては、学習障害児を、教育的見地から妥当性の高いと判断される全米学習障害合同委員会による「学習障害」の定義に基づいて理解することが試みられる。さらに、学習障害児への指導の内容や方法に関しても、この定義に従って、追究ならびに検討が行われている。 特別な教育的課題の把握をしていない学習障害の診断は指導法を指示できないので、学習障害と診断することに留まっていては、個々の子どもにとり適切な指導をいつまでも始められない。一人ひとりの特別な教育的課題を見極めることが、適切な指導の実践の前提である。カリキュラムに依拠したアセスメントは、子どもの特別な教育的課題を、教育課程に見られる学習内容に即して具体的に明らかにしていこうとするもので、適切な指導の実現を図るものと期待される。 教科学習に深くかかわりのある、学習障害児が示す諸困難として、話しことば、書きことば、算数、そして推理、とこれら4つの側面の障害が教育関係者に知られているところである。本研究では、このうち、算数の障害に焦点を絞り、その状態を概観し、状態像に応じて、教育的な対応の方法を探究した。 学習障害児が困難を示す理由に認知の障害が挙げられることがある。したがってメタ認知も困難を考える上で重要であると考えられ、このメタ認知の改善に寄与する学習ストラテジーの使用(学習障害児は自発的にこれを用いないことが問題点として指摘される)を促す指導が考想され、実行された。指導により、学習障害児はメタ認知的学習ストラテジーを使用して、困難を軽減させていることが観察された。 通常の学級に在籍する学習障害児に対する教育的支援の1つとして、peer tutoringという学習の形態が考えられてよいことが文献研究から示された。
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